20年前〜DTP移行の理由
wikipedia先生のDTP解説には、それまでのアナログ工程がDTPに移行した理由が書かれている。Macintoshによる組版は、仕上がりをその場で確認できることや、文字通り机上で、ぎりぎりまでデータ修正が可能なことなどのアドバンテージを持っていた…
また製作コストを下げたいという出版社の需要の中で、次第にDTPへの移行がなされていった。あれから20年程が経過して、どうなったか。
・製版工程の知識がない素人が作る印刷データに悩み、
・夜中ぎりぎりまで修正の連絡を待ち、
・効率化を協議するまでもなく、とにかくコストを下げてくれ…
レイアウトソフトが主役の制作工程
DTPをそれ以前の「アナログ」と比較して、「デジタル」ということがあるが、手がマウスに変わっただけで、特にデジタルと呼べる代物ではない。
確かにPostscriptやフォント、カラーマネージメントやコンピューター自身の処理性能などを含め技術は飛躍的に向上した。
しかし、ずっと取り残されているのは、人がレイアウトソフトを使って印刷データを作る部分である。
多分、今では誰でも気付いていると思うが、DTP移行当初にあった
・仕上がりをその場で確認できる
・ぎりぎりまでデータ修正が可能
・製作コストを下げたい
これらを実現するのは、「レイアウトソフト」ではない。
パッケージソフトの「機能」「使い方」を研究・検証するだけでは、全体的な解決、継続的な解決はできない。
内省化をもうひとひねり
出版社がDTPを内省化すれば、コストが削減できると考えたのは、間違っていない。ただ、デザイン・DTP部門を人・設備もろとも持ってきただけでは無理が生じる。
結果、コストを抑えるどころか、膨れあがるのを実感したことだろう。
出版社がやりたかったのは、作成した原稿が、
・仕上がりをその場で確認できる
・ぎりぎりまでデータ修正が可能
・製作コストを下げたい
であればよかったわけで、それが自社で内省化しなくてもよい方法があれば、採択したはずである。
簡単なことを言えば、遠隔地にあるレイアウトエンジンにデータを投げて、
結果がPDFで返ってきたとしたらそれでよかった。
20年前の当時、そうした方向へ向かうための環境は整っていなかったのは事実である。
組版エンジンやフォントのライセンスを所有するメーカーにとっては、例えば10台分が1台分でまかなえるとなれば、売上を下げることになる。もしくは、1台を10台分の価格で販売するしかなくなる。
しかし、そこへ踏み出さなくても、現状をみれば、国産の組版エンジン(レイアウトソフト)は全滅状態にある。
せめて、レイアウトソフトのGUIを取り除き、今後を見据えたエンジンとしての供給が積極的にされていれば結果は少なからず変わっていたことだろう。
もう一点は、レイアウト・体裁を「手で細かく調整するこだわり」が邪魔をしている。
思い切り手をかける本であれば賛成である。「美しいデザイン・組版」というものを、コスト度外視で自分もやってみたいものである。
大半は、作り手側のエゴであり、今の読者はそれよりも質の高い情報を求めている。
ある程度のセオリー通りの文字組がされていれば文句を言う人はいない。
「ここの中ゴの英数字のアキがちょっとおかしい」というのは関係者だけである。
そういった小さな拘りが、現状の課題の要因であることをそろそろ理解しないといけない。
DTP化理想論の後始末のためのWPS
DTP化で残された課題を解決するためには、原稿作成から印刷データとして出力するまでの、編集・制作業務の仕組み(システム)を作らなければいけない。SGMLやXMLを使ったもの、大がかりなデータベースを使ったもの、Flashを使ったもの、レイアウトソフトのプラグイン…様々な試みが各所でされ、そして消えていった。
WPSは今年で10年目を迎えたが、DTP化の後始末をするために開発されたものでもある。
・仕上がりをその場で確認できる
・ぎりぎりまでデータ修正が可能
・製作コストを下げたい
・ぎりぎりまでデータ修正が可能
・製作コストを下げたい
言っていることは同じだが、アプローチは違う。
レイアウトソフトを基軸にするのではなく、
データを基軸にして、人がどのように情報を与えていけば、最終的に欲しい形にすることができるか、欲しい形にするには、どの組版エンジンが最適か、それだけである。
果たして組版的な機能、レイアウトソフトの選定は、重要ではあるが、読者も含めた全体からみたとき、優先すべき要素なのだろうか。
今の時代は、情報を与えるために、電話・メールなどする必要はない。
WEBを介してオンラインでアクセスできれば、いつでもそこに情報を与えることができ、またその結果をその場で確認することができる。
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